「胸キュン」という言葉がある。
もともとは昭和の歌唱曲の一部分であったもの。*1
それが広く伝わるようになり、今では「恋愛で切なさ/暖かさなどで強い感情になる」という意味で使われるようになった。
なぜこんな導入をしたか。
それは自分が「物語を読んでいて感情が高ぶると物理的に胸が痛くなる」という体質を持っているからである。
冗談みたいな話だが本当に胸が痛くなる。
感情がメチャメチャアガってる時に痛くなるため割と大変だし、「これネタで擦って大丈夫かな……」と思って調べた時に出てきたのが「狭心症」という言葉なので本当に大丈夫かどうかはわからない。これ本当に大丈夫なのかな……。
逆に言えば、この「胸が痛くなる」話は即ち感情を大きく揺さぶった、非常に質のいい話と呼べる。*2
そしてこの胸が痛くなるタイミング、物語で男女の関係が最高に至った瞬間によくあった。*3
そして今年は肘の骨折*4と例の流行り病*5にかかったことによって時間が生まれたため、そう言った胸キュン(物理)の物語をたくさん読むことができた。代わりに俺の体はボロボロだが。
と、まあ長々とした前フリはここまでとして。
今回のブログは、そうして寿命を削って読みふけった質のいい物語のおすそ分けである。
・薫る花は凛と咲く
pocket.shonenmagazine.comマガポケ連載の漫画。
隣り合う底辺バカ高校とお嬢様学校の主人公とヒロインが、主人公の実家であるケーキ屋の手伝いから仲良くなって恋に落ちるまでの話。いやそんなところに学校2つ作るな。*6
不良のキャラ立ちの辺りがものすごくマガジン感のする話ではあるが、内容は不器用な男とそそっかしい女がお互いにアタワタして優しくしあってお互いを好きになるという王道的展開。露骨な負けヒロインは居ないので親切設計でもある。
それ故に物語は綺麗に進んでいき、お互いがお互いのことを好きなのでまるで親戚のオバちゃん視点で見てニッコニコになりながら思春期の甘酸っぱいラブコメが楽しめる一品。
NL好きの中でも、特に両片想いのジレジレ系ラブコメが好きな人にオススメ。
・心まで脱がして~学園一の美少女は絵のためなら何でも言うことを聞いてくれるそうです~
ハーメルンのウェブ小説。
画家という道を諦めた新高校1年生の主人公が最後に桜の絵を書こうとして、そこに居合わせたヒロインを描こうとした結果興味を持たれ、もう一度夢の再起をし始めるというお話。
たとえ才能があったとしても現実的ではない道であるがための高校生らしい若い悩み、闇を抱えたヒロインと主人公の割と退廃に寄った関係性、なんか明らかに負けそうな幼なじみと、思春期ラブコメだが少し歳を食った人間に刺さるタイプ。
内面描写が非常に良く、静かだけども燃え上がるような熱の描写がとても面白かった。
特に主人公の内面描写における「創作への熱意」という点については、どちらかというと創作を嗜む類いの人のほうがより深く刺さるんじゃないだろうかと思う。そういった人にはぜひ読んでもらいたい一品。
・十三機兵防衛圏
ADVゲーム。
未来/過去/現在に飛来した、世界を侵略する「怪獣」と戦うまでの物語(ADV)と、実際に侵略してきた怪獣に立ち向かう(タワーディフェンスバトル)13人の少年少女の物語。
13人の物語を追いかけ、それぞれの情報、事情、そして感情を知り、それらが組み合わさって新たな事実を切り開いていくストーリーは非常に没入感が高い。
タワーディフェンスパートもシミュレーション系のバトルが好きな人間なのでかなり好みだった。
そして本作では13人+数人の少年少女が至るところでイチャイチャしている。*7右を見ても左を見てもNL。なんとBLまで完備しているため隙がない。
特に自分に突き刺さったのがこの二人。
パッケージの一番手前に居るメイン主人公みたいな記憶喪失の男「鞍部十郎」と、記憶を失う前の彼と恋愛関係にあり、記憶がなくなってからもクソデカ感情を向けていた女「薬師寺恵」の二人。
十郎のストーリーで怪獣と戦う「崩壊編」の事実が突きつけられ盛り上がる中、恵のストーリーで盛り上がる仲の流れは何喋ってもネタバレになるしこの衝撃はゲーム本編で体験してほしいとしか言いようがないため詳しくは言えないが、3~4年変えていなかったTwitterのヘッダーをこの二人の思いが通じた瞬間に変えてしまったレベルでアガりにアガった。というかこの話自体が男女恋愛盛りたくさんでNL好きならどこかに誰かが刺さるレベルでバリエーションが豊か。
そもそものストーリーがかなり面白いため、シュタゲみたいなノベル系のゲーム作品が好きな人におすすめ。
・三角の距離は限りないゼロ
電撃文庫のライトノベル。
周りに合わせてキャラを作るタイプ(気にしてる)の主人公が転校してきた少女に恋し、彼女の抱える「二重人格」という体質を知り、(本人が隠したがっているため)それを周囲に悟らせないよう協力していく中で仲を深めていく、という話。先日完結した。
「三角」というタイトルのお陰で修羅場ラブコメに見えるし、実際最近好きなラブコメのジャンルがこの世の終わり系修羅場ラブコメなので疑われても仕方がないのだが、
実際の内容は「自分」というものと向き合い続ける、かなり綺麗な物語。
恋した少女は一人。
だけど恋した少女は二人。
主人公の「その場に合ったキャラを演じる」という状況から求められる「自分はどこにあるのか」という悩み、「二人が好き」という感情、そして二重人格の行く末(本当の"自分"はどっちなのか)など、それぞれに答えをキッチリと出し綺麗に作品を締めたという面でもオススメの作品。終わりが良ければすごく良い。
おわりに
上記の4つは本当にオススメ。割と胸を張って主張できる本当に面白いNL作品たちであった。
そして面白い作品は何回であっても嬉しいし質の良いラブコメはいくつ接種しても損はない*8ため、いくらでも読みたいのは事実。
何かオススメの面白い話があったらぜひとも「当たりだったよー」というシェアリングをしていただきたい。当たりのシェアリングを良い文化として定着させていけ。
ではまた。